ダイジェスト No.8  Chair C-203

2009年チェアーズ作品ダイジェスト 
8番目は川北英三(カワキタヒデミ)さんの Chair C-203 です。

ここまでどちらかというとデザイン色よりの作品を紹介してきましたが、今回
登場する川北さんの作品は、一言でいえば正統派の木工職人の仕事です。

川北さんは三重県で木工房「イフウ」を主催する木工家です。非常に緻密で
精度の高い加工技術が魅力です。正統派の木工職人というと何やら、重く
どっしりしたものを想像しがちですが、川北さんのデザインは実に「シンプル」
です。それでいて素材の存在感はきっちりと生かしきります。相反する要素ですが
双方が非常にバランスの取れた形でまとまっているところをじっくりご覧ください。


本人によるコンセプト

長い時間座っても疲れない木の椅子を。


こちらもあっさりとしたコンセプトですが、まさにこの通りなのです。

The Chairs Exhibition(チェアーズの展示会)では毎回来場者の方々にご協力いただ
いて作品についてのご意見やご感想をアンケートさせていただいています。

いろんな年齢層の方が入る会場ですので、大抵いろんな視点の意見にばらけるのですが、
今年のアンケートでは「Chair C-203」が大人気で「とにかく座り心地がよい」とか
「座面にお尻が吸い付くようだ」いう意見がほとんどです。実際、座ってみた瞬間に
驚くのですが、堅い板の座面に座ったという感覚ではなく、フワッと座ったかのような
感覚が残ります。個人差はあるのでしょうが、来場の方も同じような意見がほとんど
ということは、いかにお尻の座りの良い椅子かということの証明でもあるのでしょう。
文章で伝えられないのが残念ですが、また別の機会に展示されることがありましたら
是非お試しください。

座り心地の良さの秘密は、座の高さ、座と背板の角度、体のラインに合わせた削り込み
などにあるのですが、これを実現しているのが繊細な木工の仕事です。
微妙なラインなのでうまく大きな写真が撮れませんでしたので背面からの写真をお見せ
します。座面に優しい削り込みの曲面が見えます。


シンプルなデザインを支えているのも精確な木工の仕事です。
デザイナーから言えば「シンプルなものほど難しいものは無い」ということになります。
つまりいろんな意味で逃げ場が無いのです。
「Chair C-203」では足4本 座面1枚 背板1枚の椅子としては、これ以上省き用の無い
部品数です。この中でデザインのバランスをとったり、座るための強度を確保したり
しなければなりません。実は椅子は予想外に強度の必要なプロダクトなのです。
どんな体重の方が、どんな姿勢で座るかわかりません。お子様がよじ登ったり、跳ねたり
想定外の使われ方をしても簡単に壊れる訳にはいかないのです。大ケガしますから。

「Chair C-203」の強度で一番重要なのは座面と背板の接合の仕方です。
前から見ているとわかりませんが、裏から見ると・・・


こんな風になっています。あり組とかロッキングと言って材料をお互いに凸凹で切り欠いて
組み合わせることで、接着面積を大きくして強度を高める伝統的な木工の仕口の1つです。
こういう仕事が適材適所に精確にできることで、シンプルなデザインに仕上がっているのです。

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サイズ   W415 x D540 x H 790(SH410)

価格    ¥75,000

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川北英三(カワキタヒデミ)さんのプロフィール


職業  家具職人
    
プロフィール
    1970年 生まれ
    2002年 工房イフウ設立

連絡先
    工房 イフウ
    三重県津市美里町家所4830−4
    http://efu-furniture.com